2012.07.25
「おもしろい」という言葉
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東京へ移り住んで早3年と少し。環境が変わると考え方が変わることはやはりあって、それが日々の仕事であったり撮る写真であったり、話す言葉にも違いが現れてくる。
ある仕事の関係でドイツでものづくりに励む人々と話す機会があって、僕は英語が苦手ながらそのときにスタンスを表す言葉として「Emotional」という単語を連呼されたことをよく覚えている。一体これをどう日本語に訳すべきかと考えて、出てきたのが「刺さる」という単語だった。理屈を超えて直感に訴えかける何か、という意味だ。「感情的な」と直訳して頷いてしまうより、その方が遥かに彼らの意図を汲み取れた気がして、刺さる、という言葉はそれから僕がしきりに打ち合わせで連呼する言葉になった。
一方でほとんど使わなくなった言葉もある。
「おもしろい」といえばどんな様を想像するだろうか?少なくとも僕の学生時代でのディスカッションで「おもしろい」という言葉が出た場合、それはアイディアの起源から出口まで明確に筋が通っていて、かつそれが刺さる状態にあることを指していた。しかしどうやら社会では必ずしもそういう捉えられ方をされていないことを、東京に出てから知った。
「おもしろければいい」という人が意外と大勢いる。これは大変危険なことで、その裏側には持続可能性に対する配慮の欠如や、無責任さが潜んでいる。そういう人たちが「おもしろい」と言うたびに、僕は疲れてしまった。だから僕はこの3年間を経てこの言葉をむやみに使わなくなったし、むしろ嫌うようにもなった。配慮の欠落したデザイナーだと思われたくないからだ。
たかが言葉という意識ではいけないと思う。
僕はより端正な目と腕を得られるよう努力したいのだ。