2012.04.09
映画「アーティスト」を鑑賞
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新宿ピカデリーのサイトを眺めていたらとても気になる注釈のついたフランスの映画を見つけた。モノクロ、サイレント、スタンダードサイズ(つまり4:3)で上映、と書いてあったのだ。
2012年の映画なのにモノクロ。「天空の城ラピュタ」の上映と同じ年に生まれた僕は、そもそも今までそういう映画を見たことがない。
物語の舞台は1927年のハリウッド。無声映画のスター俳優として活躍するジョージ・ヴァレンティンは、ある些細なきっかけで知り合ったペピー・ミラーの女優としての才能を見抜き、共演するようになる。やがて時代はトーキー(有声)へと変わっていき、スターへの階段を上り続けるペピーを横目に、サイレントにこだわったジョージは見放され堕ちていく。
モノクロ、4:3サイズというフォーマットならではの印象的な描写がいたるところに詰め込まれている。モノクロといっても今時のカラーカメラを使用し撮影しているため、その質感はレトロという一言では語れない。現代の鮮明なグレートーンに包まれて、人々が豊かに笑っている、楽しんでいる、悲しんでいる、泣いている、輝いているーーー。僕はもう釘付けだった。
インタビューで監督が語っている一節を、まさに体現した作品。「サイレント映画は、トーキー映画から単にせりふを抜き取った、そういう欠如の映画ではないと私は思うのです。」
僕は映画を観た後にこのインタビューを発見したのだけど、本当にそのとおりだと思った。
サイレントという注釈はあるけど音楽などは普通の映画と同じ密度で流れている。その高揚と静寂の操作も素晴らしい。物語はいい意味で王道で、エンターテイメントとしても決してつまらないものではない。だから難しい顔をしてシアターに行かなくても、リラックスして真ん中の方の椅子に腰掛ければいい。
より細部まで楽しめるようにこの映画はなるべく大きな画面と音量で、つまり映画館で観ることを強くおすすめします。