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2012.03.20

「アーヴィング・ペンと三宅一生 Visual Dialogue」展

ずっと気になっていた企画展に、ようやく行けた。三宅一生といえば説明する必要のない有名な日本のファッションデザイナーだけれども、世代の問題か僕がファッションに関する知識に疎いからか、彼の具体的な仕事に関しては驚くほど何も知らなかった。同じようにファッションフォトにも疎いためアーヴィング・ペンについてはそもそも名前も知らなかった。

主となる展示は2つ。田中一光のデザインが加わった大量のポスター作品と、撮りっぱなしの写真そのものをプロジェクターを用いて投影する展示。同じ写真を用いながらも前者は平面的に、後者は立体的に彼らの仕事を汲み取ることができる。

ポスター作品ではそのグラフィックも含め80-90年代という時代性を感じることが多かった。濃厚なネガの発色には岡本太郎や丹下健三の世代あたりから来る骨太な文脈が見えるし、理想的に白く統一された背景からは今につながる”未来”を感じられる。

会場構成は建築家の坂茂らしく、特にプロジェクション展示の空間はハッとするものだった。目一杯広大に取られた真っ白なスクリーンに、淡々とアーヴィング・ペンと三宅一生の共作が投影され消失していく。訪問者はそれに対峙して設置されたベンチに腰掛けて、まるで真夏の清涼な河縁に座って向こう岸を眺めているときのように、無垢な状態で作品を眺める。映像展示という類のものをだいたい僕は最後まで我慢して見ることができないのだけれども、今回の展示体験はとても自然で心地よく、投影されるすべての作品を難なく見れてしまった。

ファッションフォトという世界の面白さもおかげさまで汲み取れたと思う。アーヴィング・ペンが撮る写真の主体は(一部を除き)まさしく人間という立体物であって、あくまで服はその延長、拡張物としての扱いになっている。今まで前衛ファッションに対して大きな誤解を持っていたことを僕は痛感した。

展示の量が適正だったこともあり深く静かに彼らの作品と向き合っていける、良い企画展でした。

http://www.2121designsight.jp/program/visual_dialogue/