2012.02.21
原研哉著「日本のデザイン」
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最近写真にまつわる投稿ばかり続いたのでひさびさに違うものを。
文庫で原研哉の本が出版されていたので思わず買ってしまった。タイトルは「日本のデザイン」。以前から著者が言う美意識についてであったり、エンプティという概念についても書かれているけど、それよりもやはり産業や経済とデザインをどう結びつけていくのかという思考ボリュームが分厚くなっているあたり、背後にある切羽詰まった時代情勢を意識せざるを得ない。
産業とデザインが切っても切れない関係にあるのは以前からある意味当たり前だったけれども、今後は産業の近くに立つ人間もデザインの側もより互いを理解しながらものごとを組み立てていかなければ生き残れないということだろう。現に韓国のLGやサムスンは国内外から優秀なデザイナーを調達して製品外観を洗練されたものとし、ブランド価値を上げて成長している。こういったグローバルな”デザイン戦略”という考え方はずいぶん浸透しているけど、原研哉の場合はもう一歩進んで、日本と日本人が無意識に持っている普遍的な価値観を変換し深く統合することで、これからも通用する”日本オリジナル”を目指しているのだろう。
産業、もしくは経済とデザインを高度に統合することは容易ではない。少しでも放漫になれば完璧な美意識はあっという間に無音で崩壊していくし、完璧な美観を求めることが産業面の繁栄につながるとは限らない。しかしこれを実現しない限りもう世界で生き残ることも難しいという点については多くの人々がもう薄々気づいているのだろう(と信じたい)。そしてこれを高度に統合できることは今後の環境を主導できるデザイナーになり得る最低条件でもある。
いわゆる経済産業側、デザイン側どちらの人間が読んでも楽しめるポジティブな1冊だと思う。文庫なので価格が1,000円を切っていることも大きい。