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2020.07.31

4年半ウェブ制作会社を経営してわかってきたこと

僕が29歳の頃、2016年1月に設立されたウェブ制作会社「株式会社マバタキ」もありがたいことに全期黒字で今は5期目。僕を含めてメンバー4人というまだまだ吹けば飛ぶような会社ですが、それでもフリーランス時代とは全然違う要求が代表者に求められることも多く、ひとつひとつの判断が与える経営的な影響や責任も大きくなってきました。

当時は気づかなかったことでも後から振り返れば意外と大きな失敗をしていたりということも多々あって、それでも生き残っているのは本当にラッキーとしか言いようがありません。

しかし、運というのも人の能力ではあるはずです。少しでも会社を続けられる可能性を高めるために、今まで経営視点から考えてきたこと、実行してきたことをメモしてみたいと思います。

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1. 制作会社の業績の要は「1時間あたりの売上」

 
会社を続ける上で大事な利益を生む手段として、いかに売上を上げるか経費や仕入れを下げるかということがよく最初に言われますが、制作会社という典型的な労働集約型産業でいうと、仕入れというのはほとんどが人件費になると思います。

長い時間働いて売上をたくさん上げれば当然決算書での数字はよくなっていきますが、決して安くはない各種税金のために働いているわけではないですし、長時間労働を続けると持続可能性にも影響があって、いいところでバランスさせる必要があります。そこで僕は(当たり前ではありますが)各メンバーの1時間あたりの売上に着目することにしました。

この数字が高ければ残業ゼロでも十分な給料を払えるはずですし、ちゃんと数字を取ってみるとけっこういろいろな気付きがありました。人生で一度くらいはギリギリまで働くことで自身の限界を知るという場面があってもいいと思いますが、長く続けるためには限界労働を盲目的に評価してはいけませんし、経営的な観点から見ても短期の高利益より持続できる方がリターンの総数は多いと思います。(ただ、1時間あたりの売上が高すぎるとそれはそれで別の問題を生むので程度はあると思います)

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2. 誰が何をしているのかなるべく細かく把握する

 
先程の話ともつながりますが、1時間あたりの売上を上げるためにはリソースの無駄遣いはなんとしても減らさなければなりません。誰かが極端に忙しいのに、他の誰かはやることがないという状況を避けるために、場合によっては数時間単位で担当を見直すこともあります。株式会社マバタキでは僕が制作物の品質管理の大半を担当しているため、僕のチェック待ちが長いという状況も全体的にはマイナス。そういった目線から分担を考えるようになりました。

結果的に売上を増やしながらメンバーの労働時間は年々減っていっているため、今のところは成功していると言えます。しかし会社とはナマモノで、日々の細かな調整を怠るとあっという間にバランスが崩れかねません。まるで盆栽を扱うように、常に美しく保つ努力が必要だと思います。

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3. コンペや提案作成は全て有料化

 
いわゆるクリエイターとして働いている方々であれば誰もが一度はあるのではないでしょうか。「ちょっと提案してみてよ」とか「(ノーギャラの)コンペなんだけど」という類ですね。マバタキではそれを全て有料化しています。つまり、無料の場合はどんなに内容がよくてもお断りしています。

コンペで勝てるレベルの提案をまとめるためにはものすごい馬力を使いますし、こういった場面では多分に政治も影響するので、なるべく「やりがい搾取」されるような場面を回避しています。この場合、やりがいのみでなくお金も搾取されていますので。そうでなくても会社として買い手が無限に有利な状態でなく、あくまで対等な関係性を志向しています。

言い出すのに勇気のいることではありますが、この方針も今のところは上手くワークしています。もし大型案件ばかり請けている場合はちょっと難しいスタンスかもしれませんが、株式会社マバタキの場合は小さな案件もたくさん請けているので結果的にバランスしているのかもしれません。

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4. 人材はキャラクターと伸びしろで採用

 
即戦力が欲しいと思っている人は多いと思いますが、僕はこれにアゲインストしています。ドライに見たときに人材は投資の側面があるため、例えば株に近い判断基準で見る必要があります。

もし目の前に「現在の値は高く評価されているが今後あまり伸びなさそう」というAの株か、「現在はあまり注目されてないけどすごく伸びそう」というBの株が現れたとき、どちらを買うべきでしょうか? これは当然ビジネスの内容や状況、価値観によって変わるものだと思いますが、僕はずっとBを支持しています。

人材に置き換えるならAの方は確実に高給で、失敗だったときのリスクは零細企業が追うには厳しいものがありますし、上場株を買うのと違ってBは努力次第でその成功確率を増やすことも可能だと思うからです。

少なくとも現在マバタキで雇用している3名は、みな僕から見て将来有望だと思う人材です。

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5. 制作業は「ファンビジネス」

 
星の数ほどある制作会社の中からなぜ僕たちが選ばれるのだろう?と不思議に思う時期がありました。ビジネスは信用とよく言いますが、制作業においてもこれは大きく当てはまると思います。つまり、この会社に依頼すれば確実にいいものができるという安心感があれば、それはファンを獲得することにつながります。そのために必要なのはたまにいいものを作る会社でなく、作るもの全てがよいという会社でなくてはなりません。

厳しい話に聞こえますが、例えばこれを飲食店に置き換えるといかがでしょうか? 盛り付けも味もよくて当たり前という意識で客席に座るパターンがほとんどだと思います。どんな一流店であっても、自分の目の前にひとつ不完全な料理が出てきたら再びその店を訪れたいとはあまり感じませんよね。

株式会社マバタキはビジョンやバリューについて実はあまり考えたことがないのですが、「いいもの作って成果を出す、それを続ける」というミッションだけは明確に抱えている会社だと思います。

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6. みんなでご飯を食べる時間を作る

 
これは制作業あるあるかもしれませんが、黙々と目の前の仕事に向かっているとメンバー間の会話もなくなりがちです。新型コロナウイルスが感染拡大してからマバタキでもリモートワークを導入して余計にその傾向が出てきた中、たまたま渋谷のあるビストロさんがランチ弁当を始めたということで毎週金曜日にそれを買って社内メンバーで一緒に食べるということを始めたのですが、これが意外とよい。特に今みたいなご時世は、そうやって誰かと会話する場面を増やしたほうが心も安定します。

コロナ問題が落ち着いたら都内の文化的なスポットを1日かけて周る「マバタキの遠足」も再開予定です。

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7. 社長とは「恩」を売って食べる職業

 
職業として認められる仕事であればきっと何かを「売って」生活しているはずです。物書きであれば文章を、絵描きであれば絵や作品をという具合にすぐ思いつくのですが、一見すると何もしてないように見える「社長」は一体何を売っているのでしょうか?

今まで様々な大人たちを観察してきて、また自分で会社をやってきて気づいたことがあります。それは人望、権力のどちらも無い人は絶対にビジネス的に成功はしないということ。僕自身は何も権力を持たずに育ってきた人間ですし、そうすると前者が無いと上手くいかないことになります。けどそもそも、人望なんて訓練して身につくものなのでしょうか。

こういうときはなるべく問題を単純化して捉えた方が一歩踏み出す勇気を得やすいものです。それについて僕が気をつけていることは一点、関係している人全てがもっともハッピーになる方法を常に志向する、ということです。

もちろんそれはまだとても人に自慢できるような代物になっていないことを自覚した上で、一方で最終的にはそこにしか自身の存在に説得力を持たせることはできないのではないかと考えています。

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あまりこういったブログを書いたことが無かったのでオープンにするとまずい内容も含まれているかもしれませんが、お酒の力を借りながら一旦の完成校としたいと思います。日々いろいろなことが起きていく中で過去の記憶は薄れていくもので、例えば10年前の自分がどんなことを考えていたとか、意外と思い出しづらいもの。

なので今回のブログは、未来の自分のために2020年7月31日の自分を残すタイムマシーンだとも捉えています。未来の僕がこの記事を読んで「考えが甘いな」とか「つまらない内容だな」と思ったとき、それは自身が少しでも成長しているということを裏付ける作業になるのですから。