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2020.05.17

食戟のソーマ

新型コロナウィルスの感染拡大による非常事態宣言や外出自粛要請を受けて、株式会社マバタキは4月1日からフルリモートに移行。僕もご多分に漏れず家の中でYouTubeなどウェブ動画を見る時間が増えました。Apple TVを買ってセットアップしたりAmazon Prime Videoの洗練されたアカウント認証のフローを体験して、家庭用エンターテイメントの進化を目の当たりにしています。

この期間に数々の動画を見て僕が特にのめり込んだのが…「食戟のソーマ」という料理をテーマとしたテレビアニメシリーズ。話題の「鬼滅の刃」は第1話で観るのをやめてしまったけれど、なぜかこのシリーズは続きが気になって再生を止める事ができません。もともと漫画をあまり読まずに育ってきた僕からするとすごく新鮮で、(本当は期間限定で無料公開されていたエヴァンゲリオン劇場版のことについてブログを書こうと思っていたのに)先にこちらを整理しなければと思い書き起こしてしまいました。

もしかすると漫画に詳しい方から見てなんでそんな初歩的なところに、というような着目点かもしれませんが、なぜこのアニメシリーズを面白いと思ったのかざっと文章にまとめてみたいと思います。何せ僕はつい最近まで「日本のアニメ=スタジオジブリ」の人間でしたから。

■アニメーションにおける味覚や嗅覚の表現

テレビ画面は当たり前ですが視覚や聴覚に訴えるメディアです。しかしながら食をストーリーの中心に置いている本作では「美味しそう」という視聴覚表現のみでなく、「美味しい」というリアクションを視聴覚に多頻度で変換する必要があります。

その課題に対する解法が、美味しい一皿を口にした人がまさかの「全裸になる」。少女だろうが長老だろうがおじさんだろうが全員脱ぐという唐突さに最初はもう笑うしかありませんでした。
しかしなぜか繰り返し見ていると、誰も服を脱がないと物足りなく感じるように。それ以外にも多分に性的快楽を匂わせるシーンがあってこのアニメ大丈夫?とも思いましたが、食も快楽の一種であるという点においてリレーションがあるからなのか、なぜか説得力があります。

重要なのは、制限された状況において如何に表現の目的を達成し伝えるかというポイントにおいて、「食戟のソーマ」は十分にクリアしているように見えたということなのです。

■極めて漫画的な作画/動画

本作を見始めて最初に驚いたのがキャラクターの作画です。コミカルな顔やシリアスな顔、喜怒哀楽。漫画の世界では一般的なトランスフォームなのかもしれませんが、とにかく切り替えが早い。最初は強面な様子で登場してきたキャラクターも数分後には誰かにいじられてコミカルな一面が現れたり、展開が早すぎてて追えないかと思えば、意外とそれが苦でもなかったり。

西洋の映像表現しか知らない人が本作を見たらきっと「クレイジー」と言うに違いありません。それくらい破綻しているように見えるのに、その作画の多様性こそが本作をずっと見ていられる秘訣のひとつであることが理解できます。これは手描きを骨格とした日本の漫画/アニメーションならではの魅力でないでしょうか。

■健康的なストーリー

前述したように随所に性的な作画が入ったり(いかにも少年ジャンプ的な)オーバーな表現もあり、残酷に見える展開もありますが、実は根本的にとても健康的な作品に仕上がっています。

過剰な表現こそあれど作中では誰も死なないし、物理的に傷付いたりもしません。料理をテーマにしているのだから当たり前かもしれませんが、それが作者と視聴者の一種の信頼関係につながっているように思えて仕方がないのです。

また、主人公は時折無茶をしながらも非常に人格者。昨日までは敵だった人物を見方に変え、あらゆる経験を自分の技を磨くための糧にしていきます。そうやって今までは歯が立たなかった相手に対しても勝利を掴んでいくというストーリーは、極めて観る人の心を満たすものになっていると思います。

■最後に

僕の趣味からは遠いと思っていた領域で、ブログを書きたくなるほどの作品を見つけたのは久しぶりです。こんな御時世だからこその出会いだったのかもしれません。ある意味で同じフィールドにいる「作り手」として、食わず嫌いは本当によくないと再認識できる内容でした。先を拓くものはいつだって自分の「外」にある。

新型コロナウイルスの影響で新作の公開が停止しているようですが、また再開した暁にはNetflixでゆっくり追ってみたいと思います。

http://shokugekinosoma.com/