2018.02.21
牛丼屋からの卒業
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僕が東京へやってきた2009年、同じシェアオフィスに入居されていたある方の一言が、今でも時々思い出されます。
「まあ、若いフリーランスは基本『うまい、安い、早い』だからね」
当時大学を卒業したての22歳、しかも知り合いなどほとんどいない東京という地でフリーランスデザイナーとして出発して早々に、この先何を意識していけば生きていくことが出来るのかを僕に端的に示してくれた言葉です。今でもこの方にはとても感謝しています。
「うまい、安い、早い」というのはある国民的牛丼チェーン店が掲げていたキャッチコピーですが、実績もないプレイヤーが選ばれる理由を作るためにとても的を得た視点でもあります。もちろん「安い」という価格設定が生きていけないほどの廉売になってはいけませんが、幸いなことに僕は学生時代からバイト代わりにフリーランスとして仕事とお金を得ていたため、プライシングを大きく間違えることは少なかったと思います。
順調に仕事が回ってくるようになってからは「うまい、適性価格、早い」を目指すようになってきます。フリーランスとしては最も理想の状態なのではないでしょうか。この時期には余裕もできて、自分の踏ん切り次第でまとまった時間も確保できたため世界中を旅行しました。ワークライフバランスという意味では、今までで一番よかったかもしれません。しかし人間、何年も同じ状況を続けてしまうとやはり飽きるものです。
小さくても会社を作って、社員を雇ったり外注さんにお仕事をお願いするようになってくると状況が一変します。自分の言動が見かけより多くの人の生活に影響するようになり、責任が増してきます。チームとしてのパフォーマンスも考えなくてはいけませんし、財務や税制などを踏まえても「うまい、安い、早い」は少なくとも制作業ではかなりの無理が出てきます。正直この帳尻を合わせる作業は、フリーランスとして腕一本で食えてしまう人には割の合わない負荷だと思えてしまうかもしれません。
僕がそれでも会社を3期目まで続けているモチベーションは、今までと同じことをしていてもつまらない、という一点に尽きます。しかし続けたいという「要望」と続けられるという「状況」はまた別物で、もちろん後者が無いと破綻してしまいます。後者を得るためにはどうしたらよいのでしょうか。
会社を作ってからの2年強で数々の(少なくとも個人的にはショックですぐに立ち直れないような)大変なことありましたが、幸い長いフリーランス生活のおかげで、僕や僕の会社にまた仕事を発注したいと思って頂ける方々が今は各方面にいらっしゃいます。ビジネスは信用と言いますがまさにその通りで、信用という資産があると不思議なくらい何とかなってしまう。今後はその資産をさらに増していくために、冒頭の言葉から置き換えると「すごくうまい、適正価格、適性納期」を目指すべきなのだと、最近は確信しています。
ひとつひとつのプロジェクトに対してクライアントの満足度が高いと、一度他の何かの要因で仕事が途切れたとしても、いつかまた戻ってくるかもしれません。目先の問題ばかりにとらわれず、1本の木を育てるように、日々努めたいと思います。
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冒頭の写真は3年前に訪れたベネチアで撮影したもの。今日のブログは内容が固すぎなのですが、最近そんなことばかり考えているのでもう仕方がありません。
3年前まではまとめて1ヶ月も休みを取って(しかもそれを数年連続で)いろいろな国を訪れていましたが、20代のあの頃に勇気を持ってそういう行動に踏み切って本当によかったと今も思っています。それはその時点の自分が選び得る最良の選択肢を取ったと判断できているからでしょう。
それを今の状況にに当てはめると、僕が集中すべきことはもう決まっているのです。