2012.05.28
植原亮輔/渡邉良重「KIGI キギ」
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独自のプロダクトブランドD-BROSを展開する有名デザイン事務所DRAFTから独立したオフィス「キギ」のポートフォリオ。僕がよく立ち寄る本屋ではレジ近くに平積みされるほどの注目ぶりで、手にとって見てみるとそれを裏切らない素晴らしい実績たち。同じデザイナーを名乗るものとして少し自信を失ってしまうくらいだった。
THEATRE PRODUCTSの一連のグラフィックやPASS THE BATONのロゴマークなどはかなり有名だろう。彼らのすごいところはまず圧倒的な平面構成力、自由な線、そして地に足の着いた発想とロジックである。概ね「シンプル」とは対極の濃密なアウトプットだけれど、発想そのものは意外とすっきりしている。本の見開きにまるで本物の蝶が止まっているように見える「時間の標本」シリーズはその端的な例で、クリエイティブの片隅にいる身としては見ていて悔しくなるほど明快。
何よりも大きい点が、考えることを抜きにして「かわいい」「素敵」といった感想をすぐに発せられることではないだろうか。価値が時代とともに移り変わっていくなかで、最後に残るのはアイデアや概念でなく、結局はモノのみなのではと思っている。
この本を眺めていると、シンプルという名の欠如がまかり通っていた状況もようやく転換期に来たのではという期待が湧いてくるのだ。