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2017.05.23

上海。

2泊3日で上海に行ってきました。ここ7年間で20カ国以上の国を訪れて様々なインプットをしてきましたが、隣国である中国本土は今までの滞在経験わずかに2時間。香港は3回も行っているのに、東京から3時間で行けるこの街を見ないのは少し偏食過ぎないかと思っておもむろに航空券を手配。結果的にとても有意義な旅行になりました。かなりいろいろ思うところがあったので、忘れないうちにブログに記録しておきたいと思います。

笑顔と無表情

中国本土に行った経験のある方なら誰しも、無愛想な中国人の姿が印象に残っているのではないでしょうか。「背筋が凍るような無表情」と表現した方が正しいかもしれません。笑顔で接すれば相手も笑顔で返してくれるのが今まで訪れた国の大半でしたが、中国本土ではその経験が通用しませんでした。
人の往来が激しい大陸文化だからなのか、共産主義的な文脈なのか、それとも単に外国人に興味がないだけなのか。2泊3日の旅程では到底その本意まで辿り着きませんでしたが、とはいえ僕が今まで訪れた国々と明らかに違うことは確かです。

一方で今回休日に訪れたこともあり、街は家族連れやカップルで文字通り溢れていて、そこには笑顔で記念写真を撮るシーンも随所に見ることができました。このギャップが更に僕を混乱させたのです。

インターネット規制(Great Firewall)

中国本土はインターネットの規制が厳しいことで有名ですが、それは実際に訪れても強く実感するものでした。インターネット上に国境を引いていると言っても過言ではありません。ベトナムなど他の国でもネット規制は経験しましたが、運用はザルで多少のITリテラシーで乗り切れる場合がほとんどでした。その一方で中国のGreat Firewallの完全さは目を見張るものがあります。

中国国内で使用不可能なサービスをざっと上げるだけでも、Googleのサービス全部にLINE、Twitter、Facebook、Instagram、Dropboxなど、もはやインターネットにつなぐ意味を失うほどに「西側諸国」の人々が日常的に使うサービスが根こそぎ遮断されています。VPNを使えば回避できますが、それでも非常にストレスになるでしょう。

ただし経済成長戦略としては確かにワークしていて、数兆円の規模でニューヨーク証券取引所に上場したアリババに代表されるように、ITの産業育成という面では大成功と言えるでしょう。そもそものインターネットの理想とは相反していると思いますが、そういうプラスの面があることもまた捉えておく必要があると思いました。

強烈な貧富の差と、意外と安心できる治安

上海の街を実際に歩いて強く感じたのはちぐはぐな街づくりと、そこに存在するあからさまな貧富の差です。大都市に富と貧が同居するのはどこでも一緒ですが、上海の場合はそれが極端に隣接しているということです。

例えば観光地として有名な豫園から東に歩くと、ほとんどスラムに近いような一角が突然現れます。そのまま中を突き進むと突然今度は最新の高層ビルがそびえ立ち、そのまま川沿いに抜け、そこからは浦東の有名な摩天楼が見えるという具合です。ここまで距離的にはせいぜい1km程ですが、僕を驚かせるには十分な光景でした。

もちろん外国人として身の危険を感じる場所は避けて歩きますが、それを差し引いても上海のそういったスラムエリアは昼間である限り、安心して通過できる場所でした。こんなにあからさまな貧富の差が転がっているのになぜ上海はこんなに安全なのだろう?と疑問が湧いてきます。地下鉄でも全ての駅でセキュリティチェックをしているくらいですし、他にも何か治安維持のために行っている政策があるのかもしれません。もしくはまだまだ中国と上海は成長を続けているという事実が、貧の暴走を止めているとも予想しています。

恐らくアジアで最も西洋建築が残る街

外灘(Bund)地区に限らず、上海の都心には租界時代に建てられた本格的な西洋建築が数多く残されています。現在でもそれらを活用した再開発が盛んですが、今後もこの歴史的経緯が遺した多くの建築群は、この街の資産であり続けるでしょう。現時点での上海は資本主義的な素養を身に着け始めた中国人のための街、という印象が大きいですが、これが成熟すると東西文化入り交じる非常に魅力的なものになっていくかもしれません。

最後に

僕が初めて中国本土という土地に接触したのは、香港滞在中にふと思い立ってMTRに乗って訪れた深圳の街でした。その時は豊かな香港とのあまりの違いに唖然として、ゴミ箱から残飯を漁って食べるホームレスの姿を見て食欲も消滅、2時間ほどで逃げるように香港へ引き返したのです。

それ以降「中国」という国は僕の中で一種のトラウマだったのですが、今回初めてその国を目的地として滞在しました。普通に観光として考えるのであれば東アジアでも台北や香港/ソウルなどの方が現地の人も親切ですし、嫌な思いをすることも少なくおすすめですが、上海にしか無い景色があるということもまた事実だと思います。

何せ今世界でも相当なプレゼンスを誇っている国の最大の都市ですし、ニューヨークやパリ、ロンドンを訪れるのと同じように、ベンチマークとして実際に見ておく価値があるのではないでしょうか。