2015.11.01
「村上隆の五百羅漢図展」行ってきました
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今日はちょうど会館初日だった森美術館の「村上隆の五百羅漢図展」に行ってきました。
村上隆といえば国内では何かと批判されることの多いアーティストという印象ですが、その作品を実際に見ている人はかなり少ないのではないのでしょうか。美術館の常設コレクションに入ることが少ないためなかなか直接作品を見る機会がなく、僕も今回の企画展で初めて村上隆の作品を実際に見ることができました。
以前ニコニコ生放送で行われた彼の講義のアーカイブが約8時間に渡って公開されていて、僕はこれを仕事中のBGM代わりに何回も聴いていました。世間で思われているような「金の亡者」「詐欺師」的なイメージとは全く違って、単純に絵を描き続けるために必要な努力をしてきただけという印象を受けたため、村上隆という人格に対してはとてもフラットな評価を持っていて、しかし作品に関する予備知識はほとんどないまま展覧会を訪れたのです。
展示室に入るなり飛び込んでくる鮮やかな色々、絵画から受ける圧力の高さは相当なものでショックを受けるほどでした。決してそれらは「巨匠の一筆」というものではなく膨大な作業量に裏付けされたもので、いつまでも鑑賞者の目線を絵画から引き離しません。工房システムによるチームワークの結晶のようなあまりに濃厚な作品群はまるで最新技術を駆使した映画を見ているようで、それまで見たどの作家とも違う、間違いなく新しい絵画たちでした。
破綻寸前まで画面に盛り込まれたビビッドな色合いや巨大スケールのキャンバスの細部までみっちりと描き込まれた豊かな情報量はあらゆる複写で再現できるものではなくて、実作品にしか持ち得ないモノ的な魅力を十分に含んでいます。美術に素養がなくても、村上隆に批判的であるとしても、今回の展覧会は素直に評価できるものになっているのではないでしょうか。彫刻も数点展示されていて、これらも非常に見応えがあります。
何より衝撃的だったのは、太古から存在し続けている絵画というフォーマットに、まだ明快に新しい領域が残されていたという事実なのです。「新しい〇〇」はどんどんと失われていっているように思えて、ただそれは人間の諦めの裏返しであって、その諦めを正当化しようという怠惰でしかないのかもしれません。