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2015.02.20

[レビュー] Leica M6 (non TTL)


Summicron 50mmを取り付けたところ。iPhone 5S + Instagramで撮影

購入してもうすぐ丸3年になるLeica M6。僕と同じように、露出計がついていて中古の個体も多いこの機種からライカを始めた方、またそれを検討されている方は多いかもしれません。

僕が持っている機種は1986年製。M6は十数年に渡って生産されたロングセラーモデルで数度の仕様変更を経ていますが、これは最も初期に近いモデルになります。外観に見える特徴としては(上の写真ではマスキングしてしまっていますが)正面の赤いロゴの文字が「Leica」でなく「Leitz」になっていること、中期以降のモデルでは何も刻印がないトップカバー部分に「ERNST LEITZ WETZLAR GMBH」という記述があることです。また、いわゆる後のM6 TTLと比べると全体の高さが抑えられていて、M2〜M4までにより近いプロポーションです。


TOKYO / Leica M6 + Summicron 35mm (2nd) + Kodak ULTRAMAX 400

より以前のM型ライカからのユーザーには何かと酷評されるM6ですが、それでも世の中に数多あるカメラに比べて自然な操作フィーリングやインターフェイスの洗練さは際立つものがあります。多機能、高性能な現代のカメラに慣れたユーザーがM6を手にした時、そのあまりに違うデザインにきっと最初は戸惑うでしょう。このカメラは写真に対する基本的な設定(シャッタースピード、絞り、フォーカス、構図)を素早く行うのには最適なカタチをしていますが、「よい写真」の判断は全て使い手に委ねられています。

M6は露出を1/3単位できっちり調整したり、時間をかけて厳密なフレーミングを練るような用途には向きません。ざっくりと寛大に、しかし被写体により自然に近づけるカメラなのだと思います。僕はそれまで使っていたデジタル一眼レフの不自由さに気がついた反面、拠り所を失って瓦解するようなある種の恐怖心も最初は同時に感じていました。


PARIS / Leica M6 + Summicron 35mm (2nd) + Kodak ULTRAMAX 400

ライカの中では比較的新しいとはいえ、それでも現在出回っているものは製造から20〜30年経過した機械モノ。何をしても壊れないくらい丈夫な日本製とは違いますので、調子が悪くなれば修理するという前提でいるべきでしょう。幸い日本国内、特に東京ではライカの修理やオーバーホールを依頼することは難しくありません。

布幕横走りシャッターという構造が影響しているのか、最高速の1/1000秒の信頼性はやや低い印象です。僕はこれを含めて3台のM型ライカを持っていて全て一度オーバーホールに出していますが、そのうち2台では最高速で撮ったときに画面の左右で明るさにムラが出てしまいます。1/1000秒は動作すればラッキーと割り切った方がよいかもしれません。


HANOI / Leica M6 + Summicron 50mm (3rd) + Kodak ULTRAMAX 400

TTLの露出計が入っている点はやはり便利です。操作フィーリングにこだわってこれ以前のライカを購入して外付け露出計に頼るくらいなら、M6を選んでしまった方が賢明ですね。シャッター機構は機械式なので電池が無くてもカメラとしての機能は失われません。

M6で一番不満なのはファインダーに表示されるブライトフレーム枠。28/90mm、35/135mm、50/75mmの3種類が切り替わって表示され、いずれも枠が2つずつ出るため、装着レンズと画角の違う枠が必ず1つ残る状態になります。これが邪魔だと感じる場面は多々あって、所有レンズが35mm、50mm、90mmしかない僕の場合、M2のシンプルなフレームの方がマッチしています。

わずかに不満はあるものの、結果的にこのM6が最もよく使用しているカメラです。台数が多く(ライカとしては)中古価格も落ち着いていますし、実用的な道具として使い倒すのに持ってこい。純正レンズにこだわらなければ中級のデジタル一眼カメラと大差ない費用で本体とレンズを揃えることもできるので、ライカの入門機種におすすめです。


VENICE / Leica M6 + Summicron 50mm (3rd) + Kodak ULTRAMAX 400

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