2013.03.31
Reflection and Refraction
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森山大道の写真集を初めて買った。もちろん今まで名前を知らなかったわけではないけど、あまりにも有名すぎること、本屋に並んでいる写真集がどれも編集的な意味で興味をそそるものに思えなかったので、パラパラとめくっては陳列棚に返してしまっていた。
しかしこの写真集は今まで僕が見た中でもっとも森山大道のラフモノクロームを理解した上で編集されていると思った。紙質はざらっとしていてあまり光を反射せず、全体を通して「黒」が印象に残る構成。黒、もしくは暗闇というのは写真の起源を暗示していて、そこから光によって浮かび上がった虚ろな像たちが大胆なトリミングとともに濃縮されている。
この写真集の制作クレジットはほぼ日本人名だけど、出版元はどうやら香港の団体のようだ。三宅一生のPLEATS PLEASEの良質な特集がドイツのTASCHENから出版されているのを発見したときも思ったけど、日本には世界レベルで戦える作家やデザイナーはいても、それを評価することが全く追いついてないように感じてしまう。
隣に陳列されていたゲルハルト・リヒターの作品集に巻かれていた帯のキャッチコピーには唖然とした。「世界最高の画家」。それではこの帯を書いた人にとって、世界で2番目に最高な画家は誰なのだろうか?
美術は必ずしも明瞭な言葉の中のみには存在しない。こんな無知を晒してしまうようなレベルの低い謳い文句で本が売れてしまうとすれば、この国はまだまだ決定的に何かが欠けていると言わざるを得ないだろう。
Amazonの日本語版ではなぜか2013年3月現在予約受付中のこの本、都内では恵比寿のNADiffで手に入りました。