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2013.02.03

アベノミクス。

自民党に政権が戻ったことでずいぶん浮き足立った報道が続くようになったと思う。どん底だった日経平均株価は堅く1万円以上をキープしていて、日本円も2割ほど安くなったことを歓迎して「アベノミス」という言葉をそこらで聞くようになった。

世代感もあると思うけど、景気がいい状態というものを肌身で感じたことがない僕には、それが一体どんなことなのかがよくわからない。人口が減るのにGDPが増えるというのはどういうことなのだろうか?1円あたりの価値自体が下がる、つまりインフレも含めての数字的なGDP増なら多少理解できつつも、すでに必要なモノやインフラが行き渡った日本でGDPを維持するというのは生産の裏で何かを捨て続けることを意味するはずだ。
僕は昨日、買った当時は100万円したというソニーのトリニトロンテレビの廃棄を手伝った。僕たちの暮らしを包むほとんどのものは、こうやって20年も経てば価値がゼロになるものばかりなのかもしれない。

円安になれば日本全体が豊かになるという単純な構図もすでにずいぶん昔に終わっている。酒屋で1500円も出せばおいしいワインがいくらでも手に入るのは国際的に強く信用された円の賜だし、原発停止の影響で追加輸入せざるを得なくなった原油の価格は、ここ最近の為替変動のせいで何兆円という単位の新たな損失を生んでいる。2割円安になったからといって元々近隣諸国との間にある何倍もの給与落差は埋まらないし、安売りを追求するならそれこそ1ドル360円くらいにはならないといけないだろう。もちろん1ドル360円で今の生活水準は保てるわけがない。

製造業の株価は上がり調子だけれど、これは新政権への期待であって企業の創造能力への期待ではないと思っている。企業が大して必要のないものを売り続け、買わせ、捨てさせるかぎり僕は悲壮感を抱くしかなくて、為替相場が2割変わるくらいで存続の明暗が別れる程度では、未来は危ういとしか思えない。

数年前どこかの雑誌で「いかに美しく縮めていくか」という言葉を見て、上京したばかりの僕は「年寄りはなんて勝手なことを言ってるんだ」と思っていたけど、最近は少し理解できるようになったと思う。
必要のないものばかり買って捨て続けるよりも、もっと有意義な買い物をするべきだろう。大勢がモノを長く使うようになると今のGDPは確実に保てなくなるけれど、大勢がより考えて選択をする中で生き残るモノはきっと持続可能性があるだろうし、国境を越えて支持されていくに違いない。

円が多少高く評価されても揺るがない価値を生み出し、世の中に提供し続けることが強いて言えば「成長戦略」なのではないかと僕は思う。