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2014.03.16

「映像の世紀」を見て

1990年代にNHKで放送されたドキュメンタリー番組「映像の世紀」を見た。フランスのルミエール兄弟が初の商業映画を上映して以来、人類の歴史上初めて、動画によって記録された20世紀という意味でのタイトルらしい。

20世紀といえばざっと思いつくだけでも世界恐慌と二度の大戦、その後の冷戦と核開発競争、無数の民族紛争など、世界中で悲劇が連鎖した時代。それを記録した映像も凄まじいもので、今ではとても地上波で流せない内容だろう。収容所で人が撃ち殺されていく場面、餓死者の山にシベリアの雪が積もっているシーン、おびただしい数の白骨体など…包み隠さず出てくるので閲覧注意。

特に印象的だったのがニューヨークを特集した回で放映された往年のワールドトレードセンターの姿。激動の時代の記録の締めくくりとして静かに佇むツインタワーのカットを入れているのだけれど、しかしこのドキュメンタリー以降、さらに世界を揺るがす大事件が起こるのである。
アラブの春、ロシアによるウクライナへの干渉、中国の覇権拡大などの状況、21世紀も決して穏やかではないのだ。

現在の日本を形作る基礎が生まれたのは戦後の焼け野原からである。近年この国をもっとドラスティックに変えていくべきだという意見が増える一方、「何も無い」という状況から立ち上がったかつての時代に比べて、それこそもう一度敗戦するような大事件がない限り結局何も変わらないのではないかとも僕は思う。隣国やその民族に対する過激な発言や言動が散見される一方で、しかしこの「映像の世紀」を見た後に、それでも僕たちは戦争をしたいと思えるだろうか?

以前「資本主義自由経済こそが世界を平和にする」という意見を見たときは深く納得したものだけれど、最近のロシアを見て「グローバリズムは可逆的である」という指摘も実感として現実味を帯びるようになってしまった。21世紀はまだまだこれから、僕たちの想像を遥かに超える出来事が起こってしまうような気がしてならない。