BLOG.MABATAKI.JP

2011.06.17

「フリー」は全てを満たせるのか?

久しぶりに建築系の本を買った。同時に何冊か買ったのだけれども、中でもGAが出版している住宅作品集「Residential Masterpieces」はとても気に入っている。いくつかシリーズが出ていて価格は大体3千円台前半で統一、解説は冒頭にまとめてすっきりと、残りは紙面が許す限り大判で写真が掲載されているという構成だ。ウェブが本を食うと言われて久しい情報過多な今の時代において、ニーズをしっかりと汲み取った最適な内容だと思う。

久々に見る名作住宅の情報量豊かな写真達は作り手にとって正に良質な「目の保養」で、思わず気分が高揚した僕は上のルイス・バラガンの他にもカルロ・スカルパ、ジェフリー・バワの特集号をまとめて買ってしまった。

コンピュータやiPadの画面サイズとピクセル密度ではこれほど鮮明なディテールの質感描写までは難しいだろうし、ピンチインで拡大できるといっても、最初から大判で画面全体が解像され切っている印刷のほうが見やすいのは明らかだ。

それにこの先ウェブの世界がさらに進歩したとしても、これだけの高解像度の画像が不足なく無料で入手できるという状況は考えにくいだろう。フリーで全てを提供できる発信者は少ないからだ。インターネットジャンキーは金銭を支払うことに億劫になり、つい時間を浪費する方向に行ってしまう。しかしわずか3千円台の歳出でこの時間コストをゼロにできて、しかもフリーよりも情報が豊かで洗練されているならば、印刷の本のメリットや合理性は依然色褪せない。

「ウェブが本を食う」という予測は半分当たっているし、半分ズレた意見だとも思う。かつてテレビがラジオを食い尽くせなかったように、形を変えながら印刷の本は生き残っていくのだろう。

GA Residential Masterpieces