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2011.05.01

iPodと「所有の痕跡の記録」


近頃はiPhoneの浸透で少し薄れつつあるけど、最近までiPodといえば表面はディスプレイと丸いクリックホイール、そして裏面はこの傷つきやすい独特の鏡面仕上げというイメージだったのではないだろうか。

発売当時からこの裏面の処理に対しては「指紋が付きやすい」「すぐに傷がつく」というネガティブな意見が多く見られたと思う。
それでも頑なにAppleは止めることなく、今でもiPod classic、iPod touchにてこの処理を採用している。初代iPodの発売が2001年だから、もうすでに10年。ここまで続いていることなのだから、そこにはデザイナー側から何らかの意図があると解釈するべきだろう。

箱から取り出したばかりのiPodは”完璧”である。洗練されたインターフェイスのおかげで何千曲もの音楽をスマートに検索できるし、製品自体のフォルムもよい。累計2億台以上売れたことを見ても、やはりiPodは優れた製品なのだろう。

しかしこのままでは”パーソナル”が置き去りになってしまう。例えば自分が友達と同じ型番のiPodを同じ場所に置いたとして、イヤホンもケースも無い状態だった場合、どうやって自分のiPodを識別すれば良いのだろうか??

そこにこの裏面の大いなる意味がある。もし仮に自分が友達より物を乱雑に扱う性格だったとしたら? 恐らく2台のiPodのうち、より傷の多いほうが自分の物に違いない。

つまり「所有の痕跡を記録する面」という機能がここには隠されているのだ。Appleは世界中で同じ製品を大量に供給するグローバル企業だけれども、対してiPodの裏面が持つコンセプトは明確に「個人」。
開封直後のiPodは完璧で、しかしそれは使用していく過程で確かに個人の所有物となっていくというストーリーである。

もちろんiPodに限らず製品というのは使用すると傷つき劣化していくものなのだけれども、それを単に醜い状態と見なすのでなく肯定したという点でこれは新しく優れたデザインなのだ。

…もしかしたら、すでに同じことを言っている人は大勢いるのかもしれないけれども。いつもながら今更過ぎるトピックでした。