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2016.01.12

デザインの実務とは「美人のクリエイト」と「体験のデザイン」である

一言に「デザイン」と言ってもその実務の内容はとても広くて、発注側も受注側も「何に対してのデザインなのか」を整理しないままプロジェクトを進めると話が噛み合わないことが多々あります。これはある程度実務経験のあるデザイナーであれば、もしくは発注経験の多いクライアントにとっては感覚的に自明のことなのかもしれませんが、まだまだ知識として広く共有されてないな、と感じる場面があります。

そこで今回は、10年近く実務を続けてきたデザイナーとしてなるべくわかりやすく、これらを説明してみたいと思います。つまりタイトルにある通り、ある対象をデザインしていくにあたって「美人のクリエイト」と「体験のデザイン」の二大要素があり、個々の発言がどちらに対しての物なのかを理解した上で議論する必要がある、ということなのです。

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1. 美人のクリエイト

こちらは一般的に大勢の方が「デザイン」と認識している部分だと思います。この定義でいう「良いデザイン」というのは、端的に表すと「美人」が最も近いのです。華やかでかっこいい(もしくはかわいい)ビジュアルを提示されると、人間は理屈以前に感覚的にポジティブな印象を受けるものであり、これはベジタリアンに対しての「肉」とも言えるかもしれません。

建築的に表すとストラクチャーに対してのサーフェイス(表面)ですが、たかが表層と軽んじてしまうとプロジェクトにネガティブな結果を招いてしまう可能性があります。なぜならば今現在世の中で生まれるモノのほとんどは、そういった理屈のみで解くことのできない「人間」という理不尽な生物をターゲットとして作られているためです。

僕の専門分野であるウェブデザインにおいて参考に事例を2つほど挙げてみましょう。

Z TOKYO
https://ztokyo.net/

構造としては王道のウェブマガジンですが、随所に特徴的な意匠が盛り込まれていてサブカルチャー的、濃厚な印象を受けるウェブサイトです。これを一般的な意匠で構成した場合、全くその質感は変わってしまうのかもしれません。表面を徹底的に検討することでそのメディアの質を変えてしまうこともあります。そういう意味で意匠としてのデザインは人とモノをつなぐインターフェイスでもあって、たかが表層と侮れないことが理解できるでしょう。

ペエ歯科クリニック
http://pae-dc.com/

「痛そう」「怖い」といったネガティブなイメージが払拭されていて、とても明るくリラックスした印象の歯科医院のウェブサイトです。こちらは現状の課題とそれに対するコンセプトが明快に表面まで反映されているという点で、とても気持ちよく作られたサイトだと感じます。これはまさに「美人のクリエイト」に該当するのではないでしょうか。

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2. 体験(ストーリー)のデザイン

こちらももちろん「デザイン」という定義の中に含まれている大切な要素です。複雑化した今の世の中においては、むしろこれについて考えないプロジェクトの方が珍しいくらいかもしれません。また「体験のデザイン」は時に思考もアウトプットも非常に広範囲になることがあります。以下の例がわかりやすいでしょう。

キミだけの応援歌ムービー | C.C.Lemon
http://www.suntory.co.jp/softdrink/cclemon/song/

LINEやSNSでシェアされることを前提にしたプロモーションサイトです。実務的に「美人のクリエイト」ができている事もさるながら、このプロモーションを通して飲料商品を宣伝するストーリーが骨太に組み上げられていることが特筆するべき点だと思います。つまり、笑えて驚きもある動画が友人から送られてくる→気になった受信者がサイトに訪れて、また違う誰に動画をシェアするという連鎖構造がしっかり実現されているということなのです。

COMME des GARÇONS
http://www.comme-des-garcons.com/

アパレル業界のウェブサイトでありながら服が一着も掲載されておらず、必要な情報にたどり着くのが困難な設計はかなり特異で、何かの意図があってデザインされているようにしか思えません。コムデギャルソンの実店舗はファッションビルのエントランスを入ってすぐといった目につきやすい場所に立地していることが多く、リアルな体験として服に触れることを重視、バーチャルはあくまでその補足であるという考え方が汲み取れます。

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もちろん「デザイン」という定義には上に触れた二要素のどちらか一方ではなく、常に両方が含まれているものなのです。もし「デザイン」という言葉に難解なイメージを持っている方は、一度これらふたつの要素に分けて捉えて頂くと、より理解が深まるかもしれません。